尋常性乾癬

乾癬は、慢性の経過をたどる皮ふ病です。
はっきりとした原因はわかりませんが、遺伝的な要因に、気候、ストレス、食生活、肥満、高脂血症などの要素が加わって発症すると考えられています。
発疹は、大小種々の丸いもしくは楕円形の形をした発赤としてみられます。
発赤の上には、銀色で雲母様のカサカサが認められます。
以前より紫外線療法が乾癬の治療法として有効であることが知られています。

日本において、尋常性乾癬治療の現状について、
欧米において、乾癬の方は以前から多かったのですが、日本において、欧米ほど頻度はそんなに高い皮膚病ではありません。だが、欧米化の飲食習慣に伴い、1980年ごろから、日本の乾癬患者数は増え始めました。現在、計算ですが約10万人~20万人(約1000人に1人:0.1%)と言われてました。

年齢は20~50歳代で、男性は多いのです。乾癬の症状は、皮膚が赤く盛り上がり銀白色の鱗屑(ふけ)が多量に付着しています。
好発部位は頭や肘・膝などのよく擦れる場所ですが、徐々に拡大し紅皮症状態(全身が赤くなり、病変で覆われる)に至る場合もあります。
痒みに関しては個人差があり、軽度人もいます、激しい人もいます。爪も病変が生じ、白く濁り、表面が凸凹としてきます。このような皮膚症状のほか、関節の痛み、赤み、腫れや変形、ときに発熱や全身倦怠感を訴える場合もあります。
この乾癬の皮膚病は、人にうつる病気ではないですが、見た目、痒み、関節痛などから、日常生活での支障や精神的ストレスは計り知れず、その程度は癌や心疾患などと同等という報告もあります。
最近では、乾癬は全身性の炎症であり、心筋梗塞などの独立した危険因子であるとも指摘されています。

最近、紫外線療法の中で最も注目されている治療法が、ナローバンドUVB療法です。
ナローバンドUVB療法は、UVBという紫外線の中で、最も効力を示す波長(ナローバンド)だけを患部に当てる方法です。この方法は従来行われていたPUVA療法より効果が高く、副作用の頻度も低いと言われています。
この光線療法に、高濃度のビタミンD3製剤というぬり薬を併用することによって、乾癬の発疹が著明に改善するいう報告があります。治療例
近年、ナローバンドUVB療法が尋常性乾癬の新しい紫外線治療として注目されており、内服PUVA療法と同程度の治療効果が認められている。・・・
光線療法と高濃度ビタミンD3軟膏の併用による治療効果の増強については数施設より報告がある。

家庭用のナローバンドUVB紫外線治療器

ナローバンドUVB療法の併用療法としてビタミンD3軟膏の外用はまず考慮すべきです。

2018年度最新乾癬治療法:乾癬治療にヒト型抗ヒトIL-23p19抗体登場

2018年3月23日、乾癬治療薬グセルクマブ(商品名トレムフィア皮下注100mgシリンジ)の製造販売が承認された。適応は「既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿胞性乾癬、乾癬性紅皮症」、用法用量は「1回100mgを初回、4週後、以降8週間隔で皮下投与」。
乾癬は、青年期から中年期に好発する厚い銀白色の鱗屑を伴った紅斑を臨床的特徴とする慢性再発性炎症疾患。世界の人口の約3%、日本では人口の約0.3%が罹患しているといわれている。乾癬患者の大半が皮膚以外に症状を伴わない尋常性乾癬だ。罹患患者は少ないが乾癬の諸症状の他に、全身の関節に炎症、こわばり、変形などが生じる関節症性乾癬では、関節の変形は不可逆であるため、積極的な治療が不可欠となっている。
乾癬治療では、従来からステロイド外用療法、光線線療法、または内服のシクロスポリン(サンディミュン、ネオーラル他)、エトレチナート(チガソン)などの全身療法が行われており、さらに近年、抗TNFα抗体の皮下注射製剤アダリムマブ(ヒュミラ)および点滴静注製剤インフリキシマブ(レミケード他)、抗IL-12 /23p40抗体の皮下注製剤ウステキヌマブ(ステラーラ)、抗IL-17 A抗体の皮下注製剤セクキヌマブ(コセンティクス)およびイキセキズマブ(トルツ)、抗IL-17受容体A抗体の皮下注製剤ブロダルマブ(ルミセフ)などの生物学的製剤による抗体療法も可能となり、治療選択肢が広がっている。
乾癬は正常の約30倍にもおよぶ表皮細胞の異常増殖亢進を特徴とし、その病態にはT 細胞が重要な役割を担っていると考えられている。その病態にはヘルパーT 細胞17(Th17)が大きく関与していると考えられており、IL-23はTh17の活性化を促すとされている。
グセルクマブは、IL-23のp19サブユニットタンパク質と結合することで、IL-23を介した生物学的作用を抑制するヒト型免疫グロブリンG1λ(IgG1λ)モノクローナル抗体である。承認時までの日本人を含む乾癬患者を対象とした国内外の臨床試験などから本薬の有効性および安全性が確認されている。
国内第3相臨床試験を併合した本薬投与症例の検討で27.1%に副作用(臨床検査値異常を含む)が認められている。主なものは注射部位紅斑(6.3%)、上気道感染(4.2%)だった。重大なものに重篤な感染症、重篤な過敏症が報告されている。

2017年度、乾癬治療に新規内服薬アプレミラスト(オテズラ®)錠が使用可能となっております。

オテズラ®錠は、乾癬治療における世界初の経口ホスホジエステラーゼ(PDE)4阻害剤で、免疫を調整する薬剤です。
PDE4はサイクリックAMP(cAMP)に特異的なPDE で、主に炎症性細胞に分布しています。オテズラ®錠は、PDE4を阻害することにより細胞内cAMP濃度を上昇させ、IL-17、TNF-α、IL-23及び他の炎症性サイトカインの産生を制御することにより炎症反応を抑制します。
副作用として、悪心や下痢、頭痛などが生じる場合がありますが、腎障害は軽度で、比較的使用しやすい薬剤です。